震災によって
福島第一原発の事故で、川俣町山木屋地区は、全域が「計画的避難地域」に指定され、今も全世帯が避難しています。そのため、育苗中の苗や栽培ハウス、資材などもそのまま放置し、平成23年度は栽培を中止。翌年の24年も2年連続で中止せざるを得なくなりました。
2013年 再開にむけて実証栽培を開始
「平成25年度福島県営農再開支援事業」を活用した避難区域内でのトルコキキョウの実証栽培に、グループ全員で取組みました。生産者の皆さんは、避難生活のなかで、長期間栽培できないことによる技術力の低下や、市場へと出荷できない不安や危機感とも戦っていました。 避難指示区域解除後、先行して一部農地を除染し、ビニールハウス1棟を使って、トルコキキョウの試験栽培を行いました。 4月に種をまき、38品種のトルコキキョウの栽培を開始。9月には市場関係者との検討会を開催。納得の品質と、切り花としての評価を決める日持ち試験もクリアします。現地での実証栽培の検討会に参加した市場関係者は、「約3年ぶりのトルコキキョウ栽培でしたが、営農が出来なかった時期に色々な産地を見て廻ったり、勉強した成果が出ていて、むしろ3年前より良い出来に感じました。」と語っています。ブランド産地としての高い技術が守られていたことを証明し、復興に向けてメディアによる取材や注目も高まっていきました。
実証栽培を終えて、本格的な栽培に向けた検討を重ね、再開の準備を進めていた矢先に、2014年2月、大雪によるハウスの倒壊被害を受けます。新たな困難な重なり、試練が起こっても、「一人も欠けたくない」という全員の想いは、より営農再開への強い意志へとシフトし、2014年4月からグループ全員での栽培を再開します。
2014年 念願の出荷へ
6月には苗の定植を行い、その後も順調に生育していったトルコキキョウ。目立った気象被害も少なく、順調に夏の出荷時期へ。 新しい品種を栽培し、発色が鮮やかで長く楽しめる日持ちがいい花が、あぶくまトルコキキョウの特長です。 8月3日、川俣町農業復興祭が開催され、あぶくまトルコキキョウの出荷式が行われました。菅野代表から日本花き卸売市場協会の磯村信夫会長にあぶくまトルコキキョウを詰めた箱が手渡されました。市場へと向かうトラックを祝うテープカットも行われました。この日出荷されたのは、350箱計約9450本。古川道郎町長は「復興を加速させる大きな一ページになる」と挨拶されました。
夏から秋にかけて楽しむ トルコキキョウのメイン産地
9月には、農林水産大臣がハウスを視察。 大臣へ要望を直接伝え、今後に向けた復興の取組みを確認しました。 平成26年度の栽培面積は1.6ヘクタール、震災前の半分です。出荷量は約35万本。初年度は、品質の向上に努めました。暑い夏の時期の需要に答えた高品質なあぶくまトルコキキョウは、震災前よりも高値で取引され、グループでの目標も達成。評価の高い出荷を実現しました。3年間のブランクを乗り越えて、これまで通りブランド産地としての評価を取り戻しています。 出荷は、7月から10月中旬まで。あぶくまトルコキキョウの収穫の最盛期は8月中旬です。国産トルコキキョウの夏から秋の時期の流通シェアを誇ります。